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2007/11/14 10:20 | 印刷

中村計 『甲子園が割れた日 松井秀喜5連続敬遠の真実』(新潮社)

今さらちょいネタが古いんじゃないの…なんて思いつつ、
手に取りましたが、すごく読み応えのあるノンフィクションでした。

野球だけでなく、加熱する最近のスポーツ報道に
疑問を感じている人にも、
北信越地域のスポーツはなぜ勝てないの?と
素朴な疑問を感じていた人にもおすすめ。

高校時代の思い出をたぐっていくと、
私のようなマイナー系の陸上部から見て、野球部というと、
「負けても新聞に載ることができてうらやましい。」
「うちなんか、応援団やブラスバンドなんか絶対来ないのに。」
なんて、うらやましいことばかりだった…(T_T)

でも、他県の元・野球部だった人に話を聞いてみると、
その影で 大人の思惑に左右されやすいグレーな部分
いっぱいあって、けっこうたいへんだったみたい…。

その辺のグレーなところが、特待生問題裏金問題など、
最近になって、ふきだしてきたようです。

この本はそういう 大人のグレーな部分
高野連の言う 潔癖な「教育の一環としての野球」 の部分が
重なった 「不思議な高校野球の世界」 を選手や監督など
両校の当事者にも取材し、するどく描いています。

1992年夏、星陵対明徳義塾。「怪物」松井との勝負を避け、勝利した明徳義塾に、全国から非難の声があがった。「高校生らしくない」「卑怯もの」―「あの試合」から始まったそれぞれの葛藤。その後、両チームの球児たちはどのような思いを胸に、どう人生を歩んでいったのか、彼らのその後の奇跡を丹念に追う。 (帯の紹介文より)
 

1992年8月16日星陵(石川) 対 明徳義塾(高知) 戦
高校野球史上、今なお「事件」として記憶される 松井の5回連続敬遠。
〈甲子園なんてこなければよかった…〉
 星陵戦後、世論は明徳に猛烈なバッシングを浴びせた。それゆえの発言だろうと推測された。このコメントは今となっては、テレビで観たのか、それとも新聞や雑誌で目にしたのかは
定かではない。ただ、その言葉は、僕の胸の真ん中に彫刻刀で彫ったように深く、鋭い、彫り跡を残した。

《 中略 》

 彼らの気持ちをわかってやれるのは自分しかいない。わかるだけに今すぐは酷だ。5年、いや、10年だ。10年待とう。10年経てば彼らもきっと何もかも話せるときがくる。
(プロローグ より)

取材を続けるうちに、この時のバッシング報道と
実際の事実とは異なるものも多く、意外な真相に驚かされることに!

著者の 中村計 さんは、イチロー松井秀喜
ほぼ同年代の1973年生まれ。

スポーツ新聞記者を経て、ライターになり、
10年間ずっと胸にこびりついていたこの事件を
取材することになるまでが、なかなか運命的

高校時代、野球部で4番・キャッチャーだった著者は
高3最後の夏の大会に、自らの大失態で初戦敗退という
苦すぎる思い出を抱えていた。

「俺ならわかってやれる」 という思いは、
そんな過去を持つ彼だからこそのものであり、
10代を野球に打ち込んできた人間 だからこそ言える
熱いものが感じられます。

明徳義塾の馬淵監督・星陵の山下監督河野・青木・山口・月岩 など両校ナイン、
そして 米国にいる 松井秀喜 本人。

それぞれに 手紙で自分の気持ちを誠実に伝え、
その返事を待つような場面
が この本にはいくつも出てきます。

「あの人は今?」みたいに、いたずらに押し掛けたりせず、
きちんとした手順で取材したようすが見られ、
取材される方も誠実にこたえているようすが、読んでいてここちよかったです。


若い頃の失敗や苦い思い出は、
仮に年を取って別の形で成功したとしても、
ほろ苦く消えることはないのかもしれない…。


しかし、10代に何かに打ち込んだ人間は、
みんなそれなりに誇れるものを得て、
前に進んでゆけるのでは…?!
 


この本の10年後の両校ナインをみて、
なんだか励まされるような気分になりました。


野球に限らず、かつてスポーツで熱くなったことのある人。
試合でミスして、今へこんでいます…という若いアスリートさん。


どちらにもオススメです。

 




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