無題その4 | Home | 舞台衣装 ボタンまで見える 7列目
2006/10/01 23:59 | 印刷

緊急

こちらもご覧ください。現場支部長を務められる方のブログです。

わたしが保護の難しさを知ったのは昨年の夏のことです。
また、保護の現状や犬を取り巻く社会についても知りました。

田畑をぐるっと囲むように、家屋のある集落にわたしは住んでいます。
ちょうど家から、田んぼ1枚を挟んで200mくらいお向かいさんに、
Aくんというワンコさんがいました。ぼんすけとは仲良しではなかったですが、
立派なワンコさんです。

6月の中ごろ、そのワンコさんがどういうわけか、3週間ばかり夜昼かまわず
鳴くようになりました。
Aくんの保護者はそろそろ老年、という一人暮らしの男の人です。
老松はいつもAくんとおじさんの様子を見るともなしに、田んぼのこちらから
見ていたそうです。

「気のせいか知らんけど、最近、おっさま(おじさんのこと)見なくね?」
連日連夜鳴き通しで、睡眠不足の老松が言いました。
「そういえばそうだね。」
「行ってみる?」
「・・そうするか。」

気になって私たちは、Aくんのところへ行くことにしました。

廃工場の裏手、使われなくなったコンクリートの煙突の下の部分、
空洞の中にAくんは住んでいました。
格子をはめられた空洞は横80センチ、奥行き40センチほどの狭さです。
まず、わたしたちが驚いたのは、中が、ウンチで足の踏み場も
なくなっていることでした。
昨年の夏はものすごく暑くて、臭いもすごかったです。
Aくんは悲しい顔をして格子のこちら側の私たちを見ていました。

あまりのヒドさにしばし呆然としましたが、怒りのこみ上げた老松が
ドアをノックしました。でもおじさんは出てきません。
おじさんがいないなら、と大家さんのところへ行くと、なんとおじさんは
3週間前から骨折で入院中とのことでした。
犬の世話はこの大家さんが任されましたが、仕事も忙しく、きっと犬が
好きでないのでしょう、ままならないとのことでした。
わたしたちが見る限り、大家さんは格子の小さな差出口から、ご飯と
水を気がついたときにお鉢に足してくるだけだったようです。

「連日鳴き通しでしょう。申し訳ありませんけど、どうなってるんですか?」
隣組の内なので、もっと穏便にやってほしかったのですが、老松は
詰問口調でした。
「わたしもやれるだけやっているんですけど。」大家さんは半分
わずらわしそうに、半分言い訳めいて答えました。
それを遮って老松が言いました。
「わたしに任せていただけますか?あまりにひどいです。」

大家さんはたぶん、ムっとしたと思いますが、世話の手間が省けることのほうが
勝ったみたいでした。

私たちは一度家に戻り、使っていないリードを持ってAくんを外へ出しました。
Aくんは警戒することも、嫌がることもなく素直に出てきました。
身体が全然よごれていないところを見ると、汚れた床に寝転がったりも
しなかったようでした。何日も眠っていないのだと思いました。

格子をとってみると、中はやっぱりものすごい状態で、何週間分もの
ウンチやおしっこが染み付いて悪臭を放っていました。水のお鉢には緑の藻が浮いて、
ご飯は底に固くこびりつき、とても飲めたり食べたりできるものではありません。

今度はAくんを連れて家に帰り、水とご飯を用意しました。お腹が
いっぱいになるとAくんは眠り始めました。

水も食事も満足でなく、おまけにものすごい臭いの中で、眠りもされず、
がまんしてきたのだと思うと気の毒でした。
もっと早く行動を起こしていればよかったと思いました。

Aくんのそばで、老松と今後どうするか考えました。

1.あの、ものすごいところを掃除して、もう1度そこで暮らしてもらう。
2.おじさんが帰ってくるまで、うちにいてもらう。
3.どうせおじさんがいないのだから、おじさんのうちのスペースを
 勝手に使って新しい住居をAくんに用意し、通いでお世話する。

大して検討することもなく3に決まり、今後のお世話は老松と交代で
通って行うことにしました。

わたしたちはマスクや手袋、捨ててもいい支度を整えて、再び掃除に戻りました。
肝心なところで、わたしは目が痛くなってしまい、ほとんどの作業は老松が
怒りのエネルギーで片付けました。
大家さんのところの水道もホースも勝手にどんどん使いました。
それからカインズホームで新しい住居を買ってきて、玄関前に置きました。
そこしかスペースがないのです。どうせおじさんはいないのだから、玄関を
使う人もいませんでした。

それから毎日、老松と私が交代でAくんの元に通いました。
といっても、食事とお散歩のお世話だけですが、それ以来ピタッとAくんは
鳴かなくなりました。

Aくんの所に通い始めてすぐに、老松は入院しているおじさんのところへ
行きました。おじさんは私たちに迷惑をかけて申し訳ない、と謝るばかりだったそうです。
Aくんは狂犬病の予防接種を受けていない、聞いた老松と、帰宅後に
病院に連れて行きました。この病院ではどういうわけか診察室に
入れてもらえず、外で注射を受け、診察券ももらえませんでしたが、
これは別の話です。

また、1ヶ月ほどして私たちは、別の親子のワンコさんを二頭、
ひょんなことから家に引き取り、面倒を見ることになりました。
こちらは保護者がいつ連れにくるか全くわからないような有様でしたが、
これも別の話です。

おじさんが退院してくるまで、Aくんと、親子ワンコの計3頭の面倒を見ました。
散歩は1日3回、食事はまだ当時は朝晩2回だったので1日6食。
簡単に感じますが、とにかく24時間洗濯機が回っていたのはよく
覚えています。
弱っていた親子ワンコに必要なクーラーの調子も悪いし、
ぼんすけと親子ワンコの子どものほうがうまくいかないし、老松も
わたしも仕事の忙しい時期だし、なんだか毎日ぎりぎりでした。

お盆の前におじさんが退院してきました。
そのとき老松がおじさんに一つだけ強く言ったことがあります。
もうAくんをあのコンクリートの牢獄のようなところに押し込めないで
ほしいということです。どのみち、くさくて使えません。
おじさんはわかりました、と約束をして、本当にそれを守りました。
わたしは聞こえませんでしたが、老松が田んぼのこっちからいつも見てるぞ、と
いうようなことをほのめかしたようです。

Aくんは残りの夏とその冬を元気になったおじさんと楽しく過ごして、
(とベランダから老松が毎日見ていました。)この夏、どうも亡くなったようです。

秋になって親子ワンコさんもそれぞれになって、わたしは保護活動を
なさっている方のHPを拝見しました。全く久しぶりのパソコンでした。
そこには

・自分のうちのワンコさんに迷惑をかけたり我慢をさせるような
 保護はしない。
・保護をして、新しい保護者が見つからない場合は、自分が保護者に
 なる覚悟を持つ。

このことが強く書かれていました。
そういう覚悟もなく、怒りにまかせてAくんと親子ワンコの面倒を
見てしまいましたが、果たしてこれが正しかったのか、今ではよくわかりません。
ただ、空腹でなく、落ち着いて眠る場所を用意できたというだけです。
ぼんすけにも、うんと我慢をさせました。
覚悟のないままやってしまったことを、後悔するときもあります。

でも、ありがたいこともありました。
事情を知った親しい方が足りないでしょうからとバスタオルをたくさん
送ってくださったことです。今もこのとき送っていただいたバスタオルを
見ると、感謝の気持ちでいっぱいになります。そして、暑かった去年の夏、
寝室にしていた部屋で「チャングムの誓い」を見ながら老松とこれから
どうするんだと頭を抱えていたこと、リポビタンDとかDAKARAばかり
飲んでいたことを思い出します。

わたしたちがたった3頭のお世話が増えただけで、
こんなに大変だったのですから、団体として活動なさっている方々は
いかばかりかと思うのです。
ですから、緊急!の文字を見るといてもたってもいられず、バスタオルを
まず梱包します。そして、老松の財布から何枚か抜き出します。
老松もわたしの財布から何枚か持って行きます。大松にはお茶代の
かわりに水筒が渡されます。
間接的ですし、お金や物資で解決しようとしているとの見方もあるでしょう。
だけど、これしかできません。これで精一杯です。
広島ドッグパークの保護は始まったばかりです。
もうちょっとわたしたちにできることはないか考えています。

私は犬と暮らした経験はありません。でも、嫌いなわけではありませんよ。投稿を読ませていただきました。面白かったです。犬や猫などのペットと係わり合いを持って暮らす人のモラルって様々なんだなぁって思いました。普通に生活している中で、道徳的にそりゃぁ無いでしょ、みたいな行い(ごみのポイ捨てとか)をする人はまれにいますが、それが、ペットに関する事になると、善悪の幅がすごく広くなるなぁって思いました。哺乳類系ペットと暮らした事がない私にとって、もし今後、ワンさんやネコさんと暮らす機会ができたとすれば、今回のこの投稿で知った事は貴重だなぁって思います。
コメントありがとうございます、また長い文章をお読みくださり感謝申し上げております。

アメリカだったかイギリスだったか忘れてしまいましたが、
犬は迷惑をかけなければ、基本的にどんなところでも入れるのだそうです。
そういう国はやっぱり先進的だなぁと思ってしまいます。
それに比べて、やっぱり日本人の根底には犬は隷属させるべき
生き物、との考えが根強いと感じます。犬に限らず動物を
見下げる国民性かと思ったりします。豚に真珠、馬の耳に念仏、といった
言葉がそれを表しているのかもしれないです。

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