2014/10/29 11:04

富岡に着いて早速,富岡製糸場に向かうことに.登録発表から3ヶ月経ったこの日も来場者が沢山.一方で,個人見学者/団体見学者/電車利用者向けの入口がそれぞれ設けられており,混乱はみられませんでした.「富岡製糸場見学往復割引乗車券」を利用した筆者は待つことなくそのまま入場.
入ってすぐ,目の前に現れるのは東繭倉庫です.広告物やガイド本でも多く使われることからここで記念撮影をするお客様が多くみられました.写真左手の足場は今年二月の大雪で損傷した検査人館を修復中.この時には,乾燥場,繰糸場が被害を受けています.その他気がついた変化としては,スマートフォン用のアプリとして音声ガイド(5ヶ国語)が提供されていること(別途専用端末の貸し出しもあり)でしょうか.
富岡製糸場を後にして,周辺の中心市街地(「まちなか」と呼んでいます)をみてゆきます.まずは製糸場正門へ直結する城町通り.こちらは以前から見学者/観光客向けの店舗が何軒か展開していたのですが,空き店舗や住居をリノベーションし新たに店舗として営業する動きがみられました.新たに建てるのではなくリノベーションで対応するところにも着目せねばなりません.
4年前のほぼ同じ地点を写した写真です.これは2月の土曜日に撮影したものですが,団体のお客様がぞろぞろと通ることはあれど,沿道のお店に積極的に立寄って…ということは余りなかったものですから大きな変化といえます.

2014/10/21 21:27

今年六月,富岡製糸場と絹産業遺産群(群馬県)が世界遺産に登録されました.このニュース,過去に富岡市で活動させていただいたことのある筆者にとっても特別なものであり,当然喜んではみたものの,本当のところは実感がわかずにおりました.「それならば一度見に行ってみよう!」と行ってきましたので,その時の様子をお伝えいたします.

富岡製糸場がある富岡市へは上信電鉄上信線が通じています.2年ぶりとなる高崎駅は小ぢんまりとした様子は変わらずも,自動券売機の更新,地元の大学が協力してのレンタルサイクル設置や,工女姿での案内など,観光客に向けての取り組みがなされていました.またこの上信電鉄では新型電車7000系も登場.地域鉄道(特に電化された鉄道)での新造車はこのところぱったり途絶えていましたのでこれは明るいニュースです.
上州富岡へは40分弱.座席がすっかり埋まった状態で到着しました.こちらの上信電鉄も上高地線と同様に利用者の主体は通学生という状況が長年続いていただけに今回の世界遺産登録は大きなチャンスといえるでしょう.
斬新なデザインの上州富岡駅です.この駅舎は今年の2月,富岡市が主体となって整備されたものです.大屋根の中に駅施設と待合室,駐輪場がコンパクトにまとめられています.この10月には鉄道に関する国際的なデザイン賞「ブルネル賞」を受賞しています.
こちらは筆者が通っていた頃の上州富岡駅です(2009年撮影)キャパシティそのものに関していえば,この駅舎のままでも問題なかったのでは…と一瞬思いましたが,ここはクルマ社会の進展で忘れられがちであった「まちの玄関口」としての駅に着目し,積極的に投資を行った富岡市の取り組みに注目せねばなりません.(つづく)

2014/10/03 20:31

歩いてポートラムの終点岩瀬浜に到着です.電車の時間に合わせてちょうどフィーダーバスの姿もありました.ポートラムは日中毎時四本,フィーダーバスは毎時ニ本の運転です.対面乗り換えができることも嬉しいですね.鉄軌道が背骨,そこからバスなどの二次交通が伸びて面的に地域の移動需要をカバーする仕組み,松本市でも上高地線と西部地域コミュニティバスという形で取り組まれています.
富山駅に戻ってきました.ところで,今回の富山市内ではあちらこちらで来春の北陸新幹線開業を告知するポスター,歓迎する装飾を目にすることができました.ただ,それと同時に感じたのは危機感.何故なら,高速交通機関で東京と直結することは東京への人口流出が加速する原因の一つであるからです.(「ストロー現象」で調べてみてください)
「高速交通がないから,地盤沈下してしまうなぁ…」とボヤく,いざそれができるなればと「観光振興だ!地域活性化だ!」と手放しで喜ぶ,どことは申し上げませんが,そうした地域と,危機感を持った取り組みを進める富山市とを比べると,これからの人口減社会で生き残ることができるのはどちらかな,とヨソモノの筆者は感じた次第です.(おわり)

2014/09/30 19:57

富山市内めぐり,当初は予定していなかった富山ライトレール沿線へも足を伸ばします.ここは2006年,当時のJR富山港線をLRTとして転換したもので国内初の導入事例としてよく知られています.筆者にとっては開業直後の夏以来,かれこれ8年ぶりの訪問です.
富山ライトレールは運賃200円(全線均一/ICカードPASCAは180円)日中は15分おきのパターンダイヤが組まれています.利用者は開業後年間180万人から190万人の間で推移,この数字はJR富山港線の時代の倍以上です.(参考資料)
さて,下りたのは東岩瀬.ここには先に挙げた富山港線時代の駅舎(大正13年築)が残され,休憩所として公開されています.綺麗に整備された内部には水洗式お手洗いも.
この東岩瀬から徒歩5分ほどのところで,北陸街道に沿ってかつての北前廻船問屋が立ち並ぶ街並みが現れます.ただこの日は水曜日(かつお盆の時期)で多くのお店はお休み.歩いている人もまばらでした.一方で最寄駅の東岩瀬駅の利用客数(休日)はJR時代の4倍近くにもなっているため,観光への影響は少なくないと考えられます.

2014/09/26 19:53

大学前より折り返し,県庁前で下車.停留所にほど近いところにはご覧のような自転車がずらり.市街地で展開されている自転車の共同利用サービスCyclocity TOYAMAのステーションがありました.WEBを通じて利用登録を行い,パス(2日用/7日用/定期)を作成,利用時間に応じて料金を支払う仕組み.決済には「えこまいか」(富山地方鉄道)「パスカ」(富山ライトレール)など地元の交通系ICカードの利用が可能です.観光客向けのレンタサイクルというよりは生活の足としての利用を想定しているのでしょうか.
ここまでくると富山駅前は目の前.ちょうどやってきた南富山ゆきの「CHITETSU TRAM」に乗り込みました.今年始まったばかりのこの企画,昭和40年に製造されたデ7000形7022号が内外共にレトロに改装されています.車内はご覧の通り.水戸岡鋭治氏のデザインの特徴でもあるウッディな雰囲気はここでも.「わぁすごい!」と途中から乗り込んだ若い女性のお客様は声を上げていました.
実のところ筆者はCENTRAMの9000形などいわゆるLRVの方に興味があるのですが,都市の魅力を高める,歴史を伝えるという点でも,こうした郷愁を誘うタイプの車両が走っていていいなと思います.

2014/09/21 12:20

富山市内めぐりはここ南富山駅からスタート.ここは富山地方鉄道の鉄道線が接続するほか,市内電車の車庫もある場所です.鉄道線である上滝線をLRT化し直通運転する計画も持ち上がっており,もしそれが実現すればこの駅の有り様も大きく変化するものと考えられます.
大学前ゆきの電車を西町で下りて新しくできた環状線を見にゆきます.写真は大手モール付近の街路.石畳風の道路に広い歩道,そして機能的な停留所などが配されています.ただ朝の比較的早い時間,しかも8月の平日であったこともありましょう,歩いている人の数はまばらです.そもそもこの沿道に商店が少ないのですが,画面右手の総曲輪で今後再開発事業が行われるとのこと.行政による公共交通整備に地域(民間)が乗っかってからが中心市街地再生のはじまりなのではないでしょうか.(つまりLRTを整備しただけではダメだということ)
富山城のお堀を横目に丸の内へ.環状線と大学前方面の電車はここで分かれます.ちょうど水戸岡鋭治氏デザインの「CHITETSU TRAM」が大学方面へ向かうところ.長野県下では先頃運行を開始したしなの鉄道の「ろくもん」や小布施町のバスのデザインなどで馴染みがありますね.
諏訪川原まで歩いて電車を待つことに.幅1m.にも満たない停留所が設けられています.周辺の道路は郊外へと向かうクルマが赤信号の度に滞留.富山県が全国1,2位を争うクルマ社会であることを実感させられます.一方,そうであるが故にクルマ社会の限界もみえていて,こうして脱クルマに向けた施策が次々と打たれているのかなという印象も持ちました.

2014/09/17 11:32

夏の自由研究(?)続いては富山市内の動きについてお送りします.富山市の県庁所在地でもあるここは富山地方鉄道による市内電車,そして日本初の本格的なLRTとして有名な富山ライトレール,それら軌道系公共交通機関を活用しての「コンパクトシティ構想」が推進されている都市として知られています.
コンパクトシティ構想とは「地方都市における高齢化や人口減少の進行と市街地の拡散、大都市における高齢者の急増などわが国の都市が抱える諸課題に対応して…」と国土交通省のサイトで紹介されています.
我が国の人口減少と高齢者の増加は連日マスメディアを騒がせておりますが,一方で現在の郊外へと広がった都市を維持していくのは財政上厳しい…そんな予測から,都市機能(行政,医療,商業,文化,交通,住居)を一点に集約して行こうというものです.
このような「コンパクトシティ構想」北は青森から全国の各都市で進められていますが,富山市の場合は「公共交通を軸とした」政策が進められていることが大きな特徴です.その一環として挙げられるのが2009年に整備された写真の環状線.丸の内-西町までの1km弱の整備とCENTRAMと名付けられた9000形電車の購入は富山市が行い,富山地方鉄道が運行する,路面電車としては日本初となる上下分離方式が採られたことも特筆されます.
環状線の整備に続き,将来的には中心市街地の北部,岩瀬浜へ向かう富山ライトレールとの直通運転も予定されています.また市内電車の南端南富山駅で接続する鉄道線もLRT化し郊外から市内へ直接乗り入れる計画も検討されているそうです.「ここまでやるの!?」という素人の驚きもありますが「こうでもしないとこれからの地方都市を持続していくことは難しい」という「危機感」も感じられます.そんな訳で…また長くなりそうですが富山市内をめぐる旅スタートです.

2014/09/09 17:21

吉久の街並みを歩いてから高岡駅まで戻ってきました.この日は運良く「ハイ!トラム」の試験運行が行われる日.ダメ元で受付の方(高岡市役所の職員さんでした)に伺ったところ「どうぞ」と快い返事をいただけましたので乗車することにしました.
『ハイ!トラム(LH02形)』は鉄道総合技術研究所が開発した試験車両です.従来の架線充電のみならず,バッテリー充電による走行を可能としたことが大きな特徴の同車.この特徴を生かすことによって電化/非電化区間,鉄道線⇔軌道線の直通運転への活用などが目されています.2007年の札幌を皮切りに現在,全国の鉄道・軌道で試験・研究が進められています.
試験運転は高岡-米島口までのノンストップ(途中客扱なし)で実施されました.途中の広小路からパンタグラフを下げてバッテリー走行に切り替わりましたが,予告されなければ全く分からず走行音も至って静粛です.車内でやはり目立つのは運転台周りの蓄電池ですが,今後蓄電池の小型化が進んだところで,実際の利用に即した見直しをしたいとのお話がありました.
この蓄電池で走る電車そのものは,2014年よりJR東日本の烏山線(栃木県)で営業運転が始まっていることや,電化施設の設置/維持費の圧縮,都市に於いては景観向上といった効果が期待されることから,今後も研究が進むと考えられます.
試験運転の終点である米島口には万葉線株式会社の本社と車両所があります.趣味の人丸出しで眺めていますと運転士さんに声を掛けられました.朝の電車に乗務されていた方で,1日フリーきっぷを買ったことを覚えていていただいたようです.「オリジナルグッズもありますので是非!」とのお言葉に「これは手ぶらで帰れない!」と.高岡への帰りもその方の電車だったのですが,お客様を気遣う姿に感動しました.(これワンマン運転では中々大変なことです)
地域鉄道の再生は,市民や行政の取り組みこそクローズアップされど,肝心の鉄道事業者の努力は中々見えにくいなと感じることもあるのですが,ここ万葉線は協力な市民と行政をバックに事業者自身が「地域の鉄道として愛されよう」とする姿勢が強く感じられました.

2014/09/06 16:12

(永らく間が空いてしまいましたね…)高岡駅より万葉線に乗車しました.乗ったのは2004年より導入されたMLRV1000形電車.現在6編成が在籍する万葉線の主力です.この電車は朝6時台の下りでしたが乗客は15名弱.フリー乗車券を買い求める観光目的と思しき方もいらっしゃいました.
第581回で触れた通り,万葉線は高岡軌道線(高岡駅-六渡寺)と新湊港線(六渡寺-越ノ潟)に分かれていますが,米島口まではひたすら道路の中央をゆく併用軌道が続きます.中心市街地を離れた道路沿いにはいわゆるロードサイド店が展開しており,この点は松本など他の地方都市の郊外と良く似ています.乗り降りの様子をみていますとこの時間は米島口までの比較的近距離の移動,それから射水市内に入ったところで下車するお客様もいて,路線の特徴である地域内輸送/都市間輸送の有様をみることができました.
終点越ノ潟に到着.ここからは富山県営渡船とコミュニティバスが接続しています.徒歩圏内には新湊大橋.ここは展望台がついており上ることもできます.港湾地区という立地もあり,駅周辺地域よりは乗り継ぎや観光目的による利用が多いのでしょうか.土日祝日には岩瀬浜までを結ぶバスも運行されています.
次の上り電車に乗り庄川口で下車.駅の高岡方には庄川が流れ高岡市と射水市の境界ともなっています.下流側に並行して走る道路橋から工場をバックに走るドラえもんトラムを捉えました.銅器など古くからの「ものづくりのまち」を走る万葉線ですが,こういった工業地帯の中を走る点は上高地線と大きく異なる点といえます.
六渡寺から再び上り電車に乗って,今度は吉久で下車.道路のど真ん中にカラー塗装のみの停留所がありました.市道であり交通量も比較的少ないこと,何より低速で走る地元ドライバーの協力があってのものでしょうか.「クルマは道路の王様」との感がある日本に於いては中々見られない光景です.

2014/09/04 7:53

この夏は北陸方面に足を伸ばし,各都市とそこを走る地域鉄道をみて参りました.来春に北陸新幹線が開業することで長野県との結びつきがこれまでよりも強まり,またアクセス向上という点では強力なライバルと成り得る各地域のみてある記です.まずは富山県の「万葉線」から参りましょう.

「万葉線」は高岡駅(高岡市)-越ノ潟(射水市)の13.9㎞.を結んでいます.(厳密には高岡駅-六渡寺が高岡軌道線(軌道),六渡寺-越ノ潟が新湊港線(鉄道)ですが一体の路線として運営されています)運営は第3セクター「万葉線」現在の形になったのは2002年のこと.「全国初の第3セクター方式による路面電車の運営会社」として注目を集めました.

万葉線の走る高岡市は人口約17万人(射水市は9万人)で,日本国内で路面電車が現存する地域としては最小の部類に入ります.この条件下に於いて,万葉線はご多聞に漏れずモータリゼーションの影響を受け,利用者数は減少,1993年にはそれまで受けていた欠損補助も打ち切られました.そして1998年,当時の加越能鉄道が廃止を表明し存続問題が表面化したのです.
万葉線にとってはいよいよ厳しい状況下で大きなはたらきを果たしたのは「RACDA高岡」です.同グループは「これからのまちづくりの装置として,路面電車を活用する」という視点から活動を展開しました.これは従来の存続運動(いわゆる「乗って残そう」のようなもの)とは,一線を画すものでした.
こうした市民の力もあり,2002年に第3セクター方式の「万葉線株式会社」が設立されました.今年3月には高岡駅前の再開発に合わせ駅ビル『Curun高岡』の1階に乗り入れ,2面2線の真新しいホ―ムで2004年より導入されている「アイトラム」が利用者を出迎えます.―さて,ちょっと長くなりましたが,こちらの高岡駅から「万葉線みてある記」スタートです.