初夏を食べる「そらまめのサラダ」 | Home | 男のランチ、女のランチ
2008/05/28 15:05 | 印刷

マンゴーカルピスゼリー

















 10円玉を拾えなかった。松本駅にエスカレーターができてから1年たつ。昨年の6月はじめ、理由は忘れたが、皇太子殿下と雅子さまが松本駅に降り立たれたことがあった。その日のために急ピッチで工事をしたはずだが、間に合わなかったことを覚えている。長いエスカレータで手を振って降りてこられるのは絵になるというのに、背景は残念ながら工事中の白い壁だった。
 エスカレーターは松本城口の正面で、両側に幅広い階段がある。改札は3階なので、階段だとかなり登らなければならない。エスカレーター1基は1階分の長さで、中間の踊り場をはさんで、2基めが続いている。私はいつもどちらか一基だけエスカレーターを使う。先に階段か、後に階段かは、気分によるが、踊り場を斜めに横切るが好きなのだ。
 今朝は、先に階段を登り、踊り場にでた。降りてくる数人をかわして、斜め前のエスカレーターに向かう。エスカレーターまで15歩ぐらいである。
 5歩ぐらい歩いて、10円玉が落ちているのが見えた。いつもなら迷わず拾う。けれど、気づいたときはすでに、またいでしまっていた。そのまましゃがんで拾うか、次の一歩を出すかの判断は、瞬間のできごとなのだ。流れに逆らえず、私は次の一歩を踏み出していた。10円玉を拾うか否かの判断は、足より遅かったわけだ。
 私の前を女子高生数人が走って横切った。彼女たちは私と逆でエスカレーターから階段へと進路を変えたのだ。シャンプーの香りをおいていった。ニセアカシヤに似た甘い花のかおり。見上げるとエスカレーターには、まだ冬のスーツぽい中年男性が二人続いて乗ろうとしていた。女子高校生たちが進路を階段に変えた理由だろう。
 まだ、戻れる。私はそう思った。10円玉を拾うためにだ。だが、私の足はエスカレーターに向かってもう一歩出ていた。もう戻れなかった。10円玉を拾えなかった。
    
  



















 からのカルピスサワーの缶を水でゆすいでつぶした。スチールではない柔らかさだったけれど、アルミの表示を確かめてからアルミ缶専門のゴミ袋に入れた。ビール缶でいっぱいの袋の一番上に、カルピスサワーの缶が威張って乗った。
 カルピス大好きなんだぁと、カルピスサワーと一緒にカルピスマシュマロを私に見せびらかした。たった今、セブンイレブンから買ってきたものだ。「食べる?」私にマシュマロを袋ごと差し出す。自分は、二つ口にいれて、う~んいまいちだね、と言う。ひとつもらって噛むと、カルピス味のゼリーが弾力あるマシュマロを包むようにひろがっていった。
 1年ぶりにカルピスゼリーを作った。フルーツはアップルマンゴー。丸々ひとつ。1年ぶりだからたっぷり。「夏だね」私の顔を見て嬉しそうに笑う。そして、入るの?ぐらい大きな塊をほうばる。口いっぱいに入れて食べたいのだ。「夏だね」同じ言葉を返した。
 私は、アルミ缶の袋から、捨てたばかりのカルピスサワーの缶を拾い上げた。への字に曲がってるのをまっすぐにし、飲み口から竹の割り箸をいれて中から押し出した。へこみは元通りにはならなかったが、それなりの形にもどった。半分ほど残ったカルピスマシュマロと一緒にならべて写真を撮った。

コメント追加

タイトル
名前
E-mail
Webサイト
本文
情報保存 する  しない
  • 情報保存をすると次回からお名前等を入力する手間が省けます。
  • E-mailは公開されません - このエントリーの新規コメント通知が必要なら記入します。