”マツモト・バウンド”~bluesが聴こえる~
続・300日論争 | Home | 目薬とブラックコーヒーとチョコレート
2007/04/17 17:35 | 印刷

表現の自由に関しては沢山の判例が存在するので、
何回かに分けてやりたいと思っております。

”表現の自由”といってもなんでもかんで許されるわけではありません。
有名人が雑誌や新聞などのメディアを名誉毀損又は侮辱罪で訴えたというような事件はよく耳にしますよね。

”表現の自由”といいながら実は様々な規制や足かせが存在するのだということも我々はうすうす感づいています。

ブログをやるってのも”表現する”ということに他ならないわけですから、ちょうどいい機会じゃないかとも思いますので、”表現の自由”についての裁判例を見直してみることにしましょう。

まずは、憲法の条文。

  憲法21条:集会・結社・表現の自由・検閲の禁止・通信の秘密

      ①集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、
       これを保障する。

      ②検閲はこれをしてはならない。
       通信の秘密はこれを侵してはならない。

さて、次に判例ですが、表現の自由に関する判例は山ほどあるのですが、今日は、お松様のエントリーに触発されたこともあり、澁澤龍彦がらみの裁判例を。

事件の内容:澁澤龍彦が翻訳出版したマルキ・ド・サドの小説
       ”悪徳の栄え”が刑法175条に反するとして、起訴された。
        (刑事訴訟として争われました)

      (参考)刑法175条:わいせつ物頒布罪
          わいせつな文書、図画その他の物を頒布し、
          販売し、又は公然と陳列した者は、2年以下の
          懲役又は250万円以下の罰金もしくは
          科料に処する。

裁判の争点:芸術的・思想的価値のある文書とわいせつ文書
      とは、どのように判断し、区別されるのか?

判決の要旨:芸術的・思想的価値のある文書であることによって
      文書内容のわいせつ性を減少・緩和させることと
      なっても、わいせつ文書であることには違いは無い。
      また、特定の章句の部分を取り出して、その部分
      のみのわいせつ性の有無を判断すべきではなく、
      文書全体との関連において判断されなければならない。

      つまり、わいせつ性を持つ文書として刑法175条
      による処罰の対象となるかどうかは、その文書の持つ
      わいせつ性と芸術性を比較衡量して判断すべきではない。

この裁判は、最高裁まで争われ、結局、澁澤に言渡された刑は、罰金7万円でした。

私見ではありますが、”悪徳の栄え”は、わいせつ性のある表現が含まれており、その部分がこの小説の内容を理解する上で、重要な役割を果たしていることから、見逃すことができなかったのではないかと思います。

また、表現物に対する芸術的・思想的評価と刑法による処罰は別だよ。とも言っているような気がします。

ここで浮かんでくる疑問が、文書のわいせつ性の判断ってどうするのかってこと。

この点については、永井荷風の「四畳半襖の下張」のわいせつ性が争われた裁判で一応の結論が出ています。

それを大雑把にまとめると、
「文書のわいせつ性の判断にあたっては、いたずらに性欲を興奮又は刺激せしめ、かつ、普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するものといえるかどうかを判断すべきである。」
ということらしい。

分かりやすいようでなかなか難解ですねえ。
だって、「普通人」ってそもそも?
「正常な性的羞恥心」「善良な性的道義」って何をもって判断するの?

要するに本来であれば受け手の感じ方なんて皆それぞれ違うのに、それを一つにまとめようとしていることに無理があるような気がするんだよなあ。

だからこそ、澁澤の裁判も、罰金7万円っていうどっちらけな判断になったのかもしれないですねえ。

ちなみに私は澁澤が翻訳したサドの”悪徳の栄え”は読みましたが、面白かったですよ。
でも、私の性欲を興奮又は刺激はしなかったですけどねえ。

悪徳の栄えが・・
刑事訴訟になったなんて知らなかったです。
ちょっと(かなり)ショックです。
ちょっと混乱しててダメなワシですが7万言い渡されたってことは
やっぱりわいせつと判断されたんでしょうか・・。
そういえば最近は、発禁とか、わいせつとあまり
聞かぬような気がします。
時代性なんでしょうか。
おっしゃるように「正常な性的羞恥心」の判断の基準なんて
今の時代ないに等しいですよね・・
大変興味深いエントリをありがとうございます。
(ご紹介もいただいて^^;ありがとうございます)
”悪徳の栄え”が刑事訴追されたってことを初めて知った時は、私も正直吃驚しました。

最終的に罰金7万円だったということは、”悪徳の栄え”全体がわいせつな文書であると言う判断ではなく、文書の一部にわいせつ性のある文章があった。という判断がなされたのではないかと想像します。

また、澁澤自身がこの裁判において結構いい加減な態度(例えば裁判に遅刻するとかですが)だったことが、裁判官の心証を悪くした可能性も否定できないと思われます。

確かに最近では、”発禁”なんて死語みたいなものですよねえ。
仰る通り、「正常な性的羞恥心」の判断基準なんて現代には無いに等しいと私も思います。
今、アマゾンで「悪徳の栄え」見てきたら、同じ「悪徳~」でも
18禁のものがありました(マーケットプレイスですが)
遅刻の渋澤氏にまたまたショックです。
18禁ですか。
私はそんな内容の小説ではないと思いますが、
やはり、そういうものなのですかねえ。

何故遅刻したのかは分かりませんが、
どうも澁澤は裁判をお祭り騒ぎとして楽しんでいたようですね。



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